判例紹介

2018.06.21

ボーナス・賞与(一時金)が支払われなかったり、減額された場合はどうなるのでしょうか。

1 賃金・労働時間などの労働条件は、個々の労働者と会社との間の労働契約で定められるべき事項ですが、わが国では労働契約で労働条件の詳細を定めることはなく、契約書を作成しないことも珍しくありません。

 

2 実際上、労働条件は使用者が作成する就業規則において統一的に定められています。

また、労働組合(以下「組合」といいます。)のある企業では、労働条件は組合との交渉を経て労働協約で定められることもあります。

 

3 労働基準法や労働組合法は、個々の労働者と会社との間で就業規則や労働協約の定めを下回る労働条件で働くという合意しても、その合意は無効となること及び労働協約の定めは就業規則の定めに優先して適用されることを定めています。

このように、労働条件については労働協約の定めがあればこれに従うことになり、労働協約の定めがなければ就業規則の定めにより決められることになります。

 

4 賞与(一時金)についても労働協約や就業規則で支給時期、金額ないし金額の決定方法(たとえば基本給の○ヶ月分)が具体的に定められていれば、労働者は会社に対してその支払いを求める具体的な権利を有することになります。

 

5 これに対し、就業規則には「業績により年2回賞与を支給する」等の定めがあるだけで、具体的な金額や金額の決定方法が定められていない場合にはどうなるのでしょうか。

大部分の会社の就業規則には賞与に関する規定がないか、あっても上記のような抽象的な規定しかありません。そのような場合、労働者は賞与の支払いを求めることができるのでしょうか。

 

就業規則に賞与の規定がなかったり、「業績により賞与を支給する」旨の抽象的な規定があるだけで、賞与の金額や金額の決定方法について具体的な規定がない場合には、賞与の具体的な請求権が就業規則によって保障されていないことになります。このような場合、賞与を支給するか否か、賞与の金額の算定基準や算定方法をどうするのか、査定を反映させるのか否かなどは、労使の交渉または会社の決定により決まることになり、労働者は労使の交渉や会社の決定がなされるまで、労働者が賞与の請求をすることはできないことになります。

 

労働組合のある会社では毎年春闘時に賞与について交渉をして労使協定(正確には「労働協約」)を締結しています。毎年当たり前のように労使協定が成立して賞与が支給されていたとしても、労使協定は1年間の期限付きのものなので、労使の合意が成立せず労使協定が締結されないかぎり、賞与の請求はできないことになります。

 

組合がなかったり、組合と会社との賞与に関する合意が成立しない場合には、賞与を支給するか、その金額をいくらにするのかについては会社の決定に委ねられることになります。

 

 

弁護士 増田正幸

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