判例紹介

2014.04.20

特別縁故者の財産分与について

被相続人の相続財産(総額約1億4000万円)のうち、特別縁故者2名に対し、500万円、2500万円の分与をそれぞれ認めた事例
東京家裁平成24年4月20日審判(判例タイムズ1417号397頁、判例時報2275号106頁)

 

【解説】

 

1 特別縁故者とは
被相続人が死亡すると相続が発生し(民法882条)、相続人が被相続人の権利義務を承継するのが原則です(民法896条)。では、相続人が存在することが明らかでない場合はどうなるのでしょうか。
そのような場合、家庭裁判所は、利害関係人(債権者・受遺者・特別縁故者など)又は検察官の請求によって、相続財産管理人を選任し(民法952条1項)、相続財産管理人を通じて相続人を捜索する手続等を行います。その結果、相続人が見つからなかった場合は、被相続人と一定の縁故関係にあった者が相続財産を取得できることがあります。

 

2 特別縁故者の財産分与
民法958条1項は、相続人が見つからなかった場合、相当と認めるときは、家庭裁判所は、(1)被相続人と生計を同じくしていた者、(2)被相続人の療養看護に努めた者、(3)その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、精算後残存すべき相続財産の全部または一部を与えることができると規定しているのです。これを特別縁故者に対する相続財産分与といいます。
では、どういう場合に特別縁故者と認められるのでしょうか。上記の(1)「被相続人と生計を同じくしていた者」と(2)「被相続人の療養看護に努めた者」は比較的イメージをしやすいのですが、(3)「その他被相続人と特別の縁故があった者」はやや漠然としています。

 

3 審判内容
上掲の審判では、相続人ではなく、(1)「被相続人と生計を同じくしていた者」でも(2)「被相続人の療養看護に努めた者」でもない者が、(3)「その他被相続人と特別の縁故があった者」に該当するかどうかが問題になりました。申立人のうち一人(第一事件申立人)は被相続人の姉の長男の妻で、もう一人(第二事件申立人)は被相続人の妻の母親の妹の娘でした。結論としては、両者ともに(3)「その他被相続人と特別の縁故があった者」に該当すると認定され、相続財産の分与が認められました。
第一事件申立人については、申立人の夫が生前、被相続人と親密に交流していて被相続人から財産の管理処分を任せる意向を示されていたこと、申立人自身も夫を通じて被相続人と親密に交流していたこと、被相続人が申立人の夫に財産の管理処分を託する遺言書を書いた旨伝えるなど申立人に対しても一定程度の経済的利益を享受させる意向を持っていたこと等の事情が、第二事件申立人については、申立人が長期に渡って被相続人と交流を続けていたこと、被相続人の自宅の鍵を預かって高い頻度で被相続人の自宅を訪問して家事を行い被相続人の妻の世話をしたこと、被相続人の遺骨を寺に納骨したこと等の事情が考慮されています。
なお、相続財産の分与額については、裁判所は第一事件申立人(500万円)と第二事件申立人(2500万円)とで異なる額を認定しています。被相続人との親密度・縁故の違いが考慮されたのでしょう。
このように、「その他被相続人と特別の縁故があった者」に該当するか否か、該当するとして相続財産の分与額がいくらになるのかは、諸般の事情を考慮して具体的に検討されることになるのです。

 

4 国庫帰属
特別縁故者への分与が完了してなお余剰がある相続財産は国庫に帰属します(民法959条)。上掲のケースでは全部で約1億4000万円の相続財産がありましたが、特別縁故者二人に分与されたのは合計3000万円だけですので、残り約1億1000万円は国庫に帰属することになります。

 

 

 

弁護士 桑原至

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