活動報告

2010.11.20

高年齢者の雇用について

弁護士 増田正幸

 

1 はじめに

わが国の総人口は1億2751万人(平成21年10月1日)で、そのうち65歳以上の高齢者人目は過去最高の2901万人に達しています(男性は1240万人、女性は1661万人)。総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)22.7%であり、前期高齢者(65から74歳)は1530万人(総人口の12.0%)、後期高齢者(75歳以上)は1371万人(総人口の10.8%)です。すでに高齢化率は22,8%に達しており「超高齢社会」なっています。

 

今後、総人口が減少するなかで、高齢化率はますます上昇すると言われています(平成54(2042)年以降は高齢者人口が減少に転じても高齢化率は上昇することになります)。

 

そして、平成67(2055)年には高齢化率は40.5%に達し、2.5人に1人が65歳以上、平成67(2055)年には75歳以上人口が給人口の26.5%となり4人に1人が75歳以上ということになります。

 

平成21(2009)年は、高齢者1人に対して現役世代(15から64歳)は2.8人ですが、平成67(2055)年には、高齢者1人に対して現役世代(15から64歳)1.3人と、世界のどの国もこれまで経験しかことのない高齢社会になることが予想されています。

 

2 高年齢者の雇用対策

人口が減少する中で、高年齢者であっても健康である限り就労することは社会全体にとっても、高年齢者本人の社会参加という点でもきわめて重要です。

 

政府は高年齢者の雇用対策として、
[1]定年の引上げ、継続雇用制度の導入等による高年齢者の安定した雇用の確保の推進
[2]中高年齢者の再就職の援助・促進
[3]高年齢者の多様な就業・社会参加の促進
などの対策を掲げています。

 

[1]については、高年齢者雇用安定法(「高年法」)に定める高年齢者雇用確保措置が周知され、導入が促進されることが中心課題です。[2]については、雇用奨励金や助成金による再就職の促進や募集・採用時の年齢制限の禁止などが挙げられています。[3]については、シルバー人材センター事業が重要な役割を果たしています。

 

ところで、前記のとおり「高齢者」というのは65歳以上を指しますが、雇用確保が問題となる「高年齢者」というのは、55歳以上の者(高年法2条、同法施行規則1条)を指します。また、高年法では45歳以上を「中高年齢者」(高年法2条、同法施行規則2条)としています。

 

 
高年法による高年齢者に対する雇用確保

最初に、高年法による高年齢者に対する雇用確保について述べます。

 

(1)定年年齢の制限

[1]定年制は、労働者が一定の年齢に達したときに労働契約が終了する制度です。定年到達前の退職や解雇が格別制限されていない(期間の定めのある労働契約の場合は契約期間中は「やむを得ない事由」がない限り解約できない)点で労働契約に期間の定めがある場合とは異なり、期間の定めのない労働契約の終了事由ということができます。

 

[2]他方、定年制には年齢による差別という面がありますが、合理的な差別として憲法14条や27条1項には反しないものとされてきました(ただし、労働者が定年年齢に達しだからといって労働能力や適格性が衰えるとは限らないので、定年制の合理性は長期雇用システムと年功的処遇を前提としているので、長期雇用システムが解体され、年功的処遇が能力主義・成果主義と置き換えられた場合には不合理な差別とされる可能性がある)。

 

[3] 高年法8条は「定年は、60歳を下回ることができない」として、60歳未満の定年制を禁止しています。

昭和61(1986)年に高年法が制定されたときには60歳定年制が努力義務とされていましたが、平成6(1994)年の高年法改正により上記のように60歳未満の定年が禁止されました。

 

[4] 60歳を下回る定年年齢が定められている場合には高年法8条に違反することになります。この場合にはその定年の定めは無効になります。当該定年が無効になった場合には定年制が存在しない状態になるのか、60歳定年制が設けられた者とみなすのかについては争いがありますが、平成17年11月30日福岡高裁宮崎支部判決(牛根漁業協同組合事件)は58歳定年制について高年法8条に「抵触する限度」において私法上も無効とし、「少なくとも60歳までの雇用が保障されたといえる」と判示しました。

 

(2)65歳までの雇用の確保

65歳までの雇用確保は,すでに平成2(1990)年改正によって使用者の努力義務であることがうたわれていましたが、ようやく平成16(2004)年の法改正によって、使用者の法的義務とされました(改正法の施行は平成18(2006)年4月)。 60歳で定年を迎えた労働者の60歳以降の雇用保障は実に16年もの努力義務期間が置かれた後、ようやく法的義務に高められたのです(さらに、改正法が施行されるまでに2年間の猶予期間が設けられました)。

 

高年法8条が60歳未満の定年制を排除した上で、高年法9条1項は、65歳未満の定年を定める事業主に対して、次のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)をとることを義務づけています。すなわち、使用者は、[1]当該定年の引上げ(1号)、[2]継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう)の導入(2号)、[3]当該定年の定めの廃止(3号)のいずれかの措置をとることによって、労働者の65歳までの雇用を確保することを法的に義務づけられたのです。なお、雇用確保が義務づけられる年齢は、年金支給開始年齢の引き上げに応じて,平成18(2006)年度62歳、平成19(2007)から21(2009)年度63歳、平成22(2010)から24(2012)年度64歳とされています。

 

厚労省の調査(「高年齢者雇用確保措置の実施状況」(2009年6月1日現在))によれば、上記のいずれかの高年齢者雇用確保措置を実施している企業の割合は95.6%(51人以上規模の企業では97.2%)(大企業では98.7%、中小企業では95.3%)と、ほとんどの企業が高年齢者雇用確保措置を実施していることになっています。その中でも、定年の定めを廃止した企業は2.9%(51人以上規模の企業では2.0%)、定年を引き上げた企業は15.1%(51人以上規模の企業で12.8%)、継続雇用制度を導入した企業は82.1%(51人以上規模の企業で85.1%)となっており、大部分の企業は高年法9条1項2号の継続雇用制度を採用していることになりますが、実際にも高年齢者雇用確保措置に開する法的紛争の大部分は継続雇用制度をめぐるものです。

 

継続雇用制度とは「現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度」(高年法9条1項2号)です。この法文からは労働者が希望しさえすれば、希望者全員を継続雇用の対象にすべきことが明らかにされています(希望者全員雇用の原則)。

 

ところが、法改正の際に、使用者側から、企業の規模や経営状態にかかわらずすべての企業に一律に希望者全員の継続雇用を義務づけることについて強い反発が出て、改正高年法は、労使協定で対象者の基準を定めれば、希望者の中から継続雇用する者を選定することを許容するという大きな例外を認めました。ただし、選定基準を設けるためには労使協定の締結が必要ですから、事業場の労働者の過半数を組織する労働組合がある場合にはその労働組合、過半数を組織する労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者との書面による協定を結ばなければなりません。さらに、これについても経過措置が定められ、平成21(2009)年3月31日まで(労働音数が300人以下の中小企業については平成23(2011)年3月31日まで)は、労使協定締結の努力をしたにもかかわらず協議が調わないときには就業規則で選定の基準を定めることが認められています(高年法附則5条、施行令附則4項)。

 

前記の厚労省の調査によれば、継続雇用制度を導入した企業のうち、希望者全員の継続雇用制度を導入した企業は41.8%(51入以上規模の企業で38.0%)、対象者となる高年齢者に係る基準を労使協定で定め、当該基準に基づく継続雇用制度を導入した企業は43.6%(51入以上規模の企業で48.4%)、労使協定の締結に向けて努力したにもかかわらず協議が調わず、法に基づく特例措置により就業規則等で基準を定め、当該基準に基づく継続雇用制度を導入した企業は14.6%(51入以上規模の企業で13.6%)となっており、全体の58.6%が選定基準を設けて継続雇用を希望する者の中から対象者を選定していることになっています。そのために、選定基準の定め方や運用についての紛争もよく起こっています。

 

(3)高年法9条の性格

高年法は、使用者が同法9条1項に違反した場合は厚労大臣(職業安定所)が指導・助言をすることができ(同法10条1項)、指導・助言に従わない場合には勧告することができることとされ(同法10条2項)、国が厚労大臣に指導・助言・勧告といった行政上の措置をとる権限を与えている法律です。同じように、たとえば労働基準法も同法違反に対しては行政機関である労働基準監督署の助言・指導・勧告の権限を与えています。このように行政機関に助言・指導・勧告などの権限を与える法規を「取締法規」といい、取締法規が行政機関に権限を与えることを公法的効力といいます。取締法規はこのように公法的効力を有するがけなので、取締法規に違反している私人間の契約に対して当然に効力を及ぼすとは限りません。ある法規に違反する契約が無効になる場合に、その法規のことを前記の取締法規に対して「強行法規」といい、強行法規に反する場合に契約が無効になることを私法的効力といいます。

 

前記のとおり労働基準法は取締法規ですが、労基法に違反する労働契約は原則として私法上も無効(たとえば、所定労働時間を1日10時間とする労働契約は8時間を超える部分については無効)だとされています。それは、労基法が開法13条で「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする(私法的効力)。この場合において無効となった部分はこの法律で定める基準による(補完的効力)」という規定を置いて、労基法に違反する場合には労使の間の労働契約も無効となり、無効となった部分に労基法の定める基準を補充することが明らかにしているからです。このように労基法は取締法規でありながら、同時に強行法規でもあるのです。以下には、高年法9条に違反する労働契約の効力が問題となるケースを紹介しますが、高年法には労基法13条のような規定がないために、そこでは高年法9条が(取締法規であることを前提に)強行法規でもあるのか否か(私法的効力を有するのか否か)についての争いが大きく影響することになります。

 

5 継続雇用制度をめぐる法的諸問題

(1)高年齢者雇用確保措置がとられていない場合

[1] 改正高年法の施行にもかかわらず、9条1項にあげる3つの高年齢者雇用確保措置のいずれもとられていないとして争われた代表的な例がNTT西日本事件です。

 

[2] NTT西日本は、同社の従業員の大多数を組織するNTT労働組合と協議の上、平成15年3月31日時点で満51歳となる従業員を対象者として、対象者のその後の処遇について、平成14年1月4日から同月31日までの間に、「退職・再雇用」型と「60歳満了」察の、いずれかを選択することを求め、いずれも選択しない者については60歳満了察を選択したものとみなすことにしました(なお、それまでNTTにおいては、独自の制度として65歳までの雇用延長を可能にする「キャリアスタッフ制度」がありましたが、その制度は同時に廃止されました)。

 

「退職・再雇用」型とは、平成14年4月30日にをもってNTT西日本を退職し、同年5月1日に新たに設立された(子会社である)地域会社に雇用され(所定内給与が20〜30%下がる)、60歳定年後は最長65歳まで、期間を1年とする契約社員として地域会社に再雇用される(「会社の業務上の必要性及び本人の希望により」更新される)というものであり、「60歳満了」型とは、地域会社には転籍せずに(地域会社以外の在籍出向、広域配転はあるが)NTT西日本で60歳まで勤務する者で、NTT西日本には定年再雇用制度はないため、定年後の継続雇用の遠はないというものでした(結局、NTT西日本には改正高年法の施行後も高年齢者雇用確保措置のいずれも行われていないことになります)。

 

このようなNTT西日本の求めに対して、実に対象者の98.4%が「退職・再雇用」型を選択しました(なお、対象者の中でいずれも選択しないためNTT西日本に残された労働者の中で遠隔地や異職種に配転された労働者が、そのような配転の効力を争った訴訟では、札幌高裁や大阪高裁などで勝訴判決が出ています)。

 

[3] その後、NTT西日本は、支店機能が地域会社に大幅に移行する等、事業環境が著しく変化することを踏まえて、平成17年3月31日時点で51歳〜59歳の同社従業員を対象に再度「退職・再雇用」型、「60歳満了」型について選択する機会を与えました(いずれも選択しない者については「60歳満了」型を選択したものとみなすことにした)。

 

[4] このときいずれも選択しなかった労働者は「60歳満了」型を選択したものとみなされ、満60歳に遠した際にNTT西日本は定年退職したものとして取り扱いましたが、これら労働者には定年後の雇用継続の途が全くありませんでした。

 

そこで平成19年ないし同20年に定年退職扱いをされた労働者が、NTT西日本を被告として、同社が高年法9条にもとづく継続雇用を確保すべき義務に違反しているとして損害賠償ないし地位確認請求訴訟を提起しました(徳島地判平成21年2月13日、大阪地判平成21年3月25日、大阪高判平成21年11月27日など)。

 

[5] NTT西日本の制度は、労働者が選択する時期が60歳よりもかなり以前であること(50歳時点)、制度そのものは改正高年法の施行前のものであること、自社で再雇用するのではなく転籍が再雇用の前提になっていることが特徴的です。

 

裁判では、第1にNTT西日本は高年法9条により、原告らに対して継続雇用制度を導入する義務ないし継続雇用をする義務を負っているのに、この義務を怠ったといえるのかどうか、すなわち、高年法9条が使用者の労働者に対する継続雇用の義務を定めた規定なのか否か(高年法9条の私法的効力)が争点になりました。第2に、被告NTT西日本が高年齢労働者に対して継続雇用制度を整えている地域会社に転籍する機会を与え、転籍すれば定年後の雇用継続が可能となったことをもって、高年法9条1項2号の継続雇用制度を導入したといえるか否かについても争われました。

 

[6] 第1の高年法9条が使用者の労働者に対する継続雇用の義務を定めた規定なのか否かという問題は、高年法9条に「私法的効力」を認めるのか否かということです。前記のとおり、高年法の法文上は高年法9条1項違反については同法10条が厚労大臣の助言・指導・勧告しか定めておらず、高年法9条1項に反する労働契約が無効であることは明示されていません。そこで、高年法9条は国が行政機関に対して、使用者に対する職権発動(助言・指導・勧告)の根拠とする法律(取締法規)(公法的効力)ではあるが、直接、私人である労使の問には適用されず、労働者に対して使用者に対する継続雇用を求める権利ないし継続雇用制度を導入させる権利までも与える(強行法規)(私法的効力)ものではないという考え方が学説でも多数です。

 

[7] NTT西日本事件では、裁判所も高年法9条の私法的効力を否定しました。その理由は、

 

i 高年齢者の雇用確保という社会政策を実現するための法律で公法的性格を有していること
ii 同条1項の法文は国が事業主に対して公法上の義務を課す形式をとっていること
iii 同項各号の排泄に伴う労働契約の内容ないし労働条件について具体的に規定しておらず、同項2号の継続雇用制度についても多用な制度が可能になるような規定しか設けておらないために、同条違反の場合に具体的にどのような制度を設ければ違反が是正されるのかについては法律上は明らかでなく、私法上の効力が発生するというほどの具体性を備えていないこと
iv 同条2項は労使協定により選定基準を設けることを許容し、高年齢者が希望しても継続雇用しないことを容認しており、各事業主が実情に応じて柔軟な措置を講ずることを許容していること
v 同法9条違反に対しては厚労大臣の助言・指導・勧告など緩やかな措置しか定めておらず、企業名の公表や罰則等の制裁が予定されていないこと
vi 逆に、同法は60歳定年制を許容し、労基法13条のような私法的効力や補完的効力を定めた規定もないため、事業主がどのような制度を設ける義務を負っているのかの特定が困難なこと
 などです。

 

[8] しかしながら、労働法の分野には他にも行政機関に対して、法律違反を是正するための措置や処分の権限を与える規定(取締規定)が多数ありますが、そのような規定について労基法13条のような私法的効力を認める明文の規定がなくとも、解釈上私法的効力が認められていることは珍しくありません。たとえば、労働者派遣法33条は(明文の規定はありませんが)私法的効力を有すること(同条に違反する契約は無効となる)については学説も認めています。

 

また、前回述べたとおり、60歳を下回る定年年齢が定められている場合には高年法8条に違反するものとして、60歳を下回る定年を定めた労働契約の部分は労使間でも無効になると解釈されています。すなわち、高年法8条が私法的効力をもつことについては争いがないのです。結局、ある条項が私法的効力を有するか否かは、その条項の文言や趣旨や性格を考慮して判断すべきことになります。

 

[9] 前記のとおり、高年法9条が公法的性格を有することは否定できません。しかし、そのことから直ちに同条が私法的効力も併せもつことを否定することにはなりません。むしろ、(私法的効力を認められている)高年法8条も同法9条1項も「高年齢者等の職業の安定その他福祉の増進」(同法1条)を目的として事業主に一定の作為・不作為の義務を課すという点では異ならないのです。

 

また、行政指導等によって高年齢者の雇用確保を図ることは高年法改正前に高年齢者の雇用確保措置が努力義務にすぎなかった時から変わっていません。したがって、高年齢者の雇用確保借景が法的義務にまで高められた改正後の高年法9条1項を、単なる行政指導・勧告の根拠規定にすぎないとみなすことは、高年法の平成16年改正の意義を否定するに等しいということができます。 65歳までの雇用確保は、16年をかけて、事業主の単なる努力義務から法的義務にまで高められ、かつ、雇用生活と年金生活の空白期間が生じないようにするために確実な履行が求められていることは明らかです。そうであるならば、高年法改正における立法者の意思は使用者に私法上の義務を課すことにあったと見るのが素直な解釈です。

 

[10] つぎに、NTT西日本事件では、自社で再雇用するのではなく子会社に転籍した者について子会社の再雇用制度が適用されることをもって、NTT西日本が雇用継続制度を導入しているといえるのか否かが問題になりました。

 

裁判所は、高年法9条は高年齢者の60歳以後の安定した雇用を確保するという図条の趣旨に反しない限り、事業主がその実情に応じて多様かつ柔軟な措置を講ずることを許容していると解するのが相当であり、また、図法の雇用確保措置によって確保されるべき雇用の形態は、必ずしも労働者の希望に合致した職種・労働条件による雇用であることを要せず、労働者の希望や事業主の実情等を踏まえた常用雇用や短時間勤務、隔日勤務等の多様な雇用契約を含むという解釈を前提に、雇用の確保については、多様な形態による雇用・就業機会の確保が図られることが重要であり、少なくとも同一企業のみならず同一企業グループにおいて継続して雇用・就業の場の確保を図ることも高年法の目的を達する方法・手段として想定されているのであり、「同法9条1項2号で定める継続雇用制度に転籍の方法による雇用継続がおよそ含まれないと解することはできない」と判示しました。

 

その上で、転籍の方法による雇用継続が許容されるためには、事業主と転籍先との問で少なくとも同一企業グループの関係があることと、転籍後も高年齢者の安定した雇用が確保されるような関係性があることを要件として示しました。そして、NTT西日本事件における地域会社はNTT西日本が全額出資して設立し、NTT西日本と資本的な密接性があり、転籍先の再雇用制度は欠勤日数が一定数に達した者や健康上の問題があるものを除き、基本的に再雇用されることになっていることから、「事業主と転籍先との間に同一企業グループの関係とともに転籍後も高年齢者の安定した雇用が確保されるような関係性が認められる」としたのです。

 

[11] しかしながら、転籍をさせるということは、その会社との間の雇用契約が終了することを意味しますから、転籍を前提とすることは「定年後も引き続いて雇用する制度」という高年法9条1項2号の文言とはそぐわないのではないでしょうか(「引き続いて」とはいえないでしょう)

 

転籍には大幅な労働条件の低下が件うことが多いのですが、前記の裁判所の考え方は、再雇用に際して大幅な労働条件の低下を許容することを前提にしています。すなわち、裁判所は「高年齢者の雇用は事業主に相応の負担を生じさせるものであること、また、高年法9条1項2号で定める継続雇用制度は各事業主の実情に応じた柔軟な措置が許容されることを踏まえると、労働条件が低下することや無条件に年金支給開始年齢までの雇用が保障されていないことをもって直ちに同号で定める継続雇用制度に該当しないとまで直ちにはいえない」としています。

 

[12] なお、NTTの場合には子会社への転籍を前提とする雇用継続の制度がありましたが、たとえば、企業に60歳定年の定めがあるだけで、雇用継続制度の導入など高年齢者の雇用確保措置が一切とられていない場合にはどうなるのでしょうか。

 

継続雇用制度をめぐる紛争の類型継続雇用制度とは「現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度」(高年法9条1項2号)であり、原則として希望者全員の雇用継続が前提になっています。

 

しかし、高年法9条2項は、当該事業所に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労傷者の過半数を代表する者との書面による協定により、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定めることを認めています。したがって、労使協定で選定基準を定めれば、継続雇用を希望する者の中から基準を充たす労働者だけを継続雇用することが可能になります。

 

さらに、高年法は附則5条で、従業員数300人を超える大企業にあっては2009(平成21)年3月31日まで、従業員数300人以下の中小企業にあっては2011(平成23)年3月31日までは、事業主が労使協定を締結するための努力をしたにもかかわらず協議が調わないときに限り、就業規則で継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定めることを許しています。

 

そこで、使用者が継続雇用制度を導入に際して、労使協定や就業規則で労働者の選定基準を定め、その選定基準にもとづいて継続雇用を拒否した場合にその選定基準の効力が争われることになります。

 

すなわち、[1]選定基準を定める手続が適正ではない、あるいは[2]選定基準の内容が法の趣旨に反しており無効であるという争いが生じます。さらに、[3]選定基準を定める手続や基準そのものには問題がない場合でも選定基準の適用の仕方が公正ではないとして、選定基準にもとづく継続雇用の拒否が争われています。

 

選定基準を定める手続の不備が争われたケース選定基準を定める手続の不備が争われたケースの1つに、京濱交通(地位確認・賃金支払請求)事件(横浜地裁川崎支部平成22年2月25日判決)(判決確定後の賃金請求を除いて請求認容)がありますので、ご紹介します。

 

(1)タクシー会社である被告においては、労働組合が複数あり、労働者の過半数で組織する労働組合がなく、また、労働者の過半・数を代表する者を選出することもできない状況にあったことから、就業規則で、かなり細かく、しかも厳しい選定基準を定めていました。

 

タクシー乗務員であった原告は、本件就業規則に規定する本件再雇用基準の内の「過去5年間の出勤率90%以上」、「過去5年間の1日当たりの平均営業収入3万3000円以上、平均走行キロ240km以上」という基準を充足していないとして、継続雇用を拒否されました。

 

原告が高年法9条2項所定の労使協定が締結されていないと主張したのに対して、被告は、被告においては労働組合が多数あるために労働組合の分担会員数の過半数との間で協定を締結すれば労使協定として有効に成立するという労使慣行があったと主張したため、就業規則で定めた再雇用基準の有効性が争われました。

 

(2)裁判所は、「高年齢者雇用安定法9条2項は、高年前者雇用確保措置としての継続雇用制度を導入するに当たっては、同条1項2号により、原則として、現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度の導入が求められるところ、事業所の実情に応じて上記原則的措置を一定程度柔軟化する必要性がある一方で、こうした柔軟化か不適切な形で行われることによって生じる、事業主による恣意的な対象者の限定などの弊害を防止するために、すべての労働者の過半数の団体意思を反映した上でかがる柔軟化を行うこととし、そのための手続的担保として、労働者の代表による関与、すなわち、当該事業所に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定め、当該基準に基づく制度を導入することを要件としたものと解することができる」という立場から、被告の主張する方法による労使協定の締結が長期間行われていたとしても、上記の高年法9条1項2号所定の継続雇用制度の導入の趣旨目的に照らせば、本件継続雇用制度の導入に当たってはこれを労使慣行として有効であると認めることはできないと判示しました。

 

(3)また、本件継続雇用制度の導入に当たって労働者の過半数を代表する者は選出されていなかったし、被告が労働者側に対して、労働者の過半数を代表する者を選出するように要請することもしていなかったから、被告は、高年齢者雇用安定法9条2項に規定する協定をするため努力をしたにもかかわらず協議が調わなかったものと認めることもできず、本件就業規則は高年法附則5条1項の要件も具備していないと判示し、本件継続雇用制度の導入を定める本件就業規則は、手続要件として高年齢者雇用安定法9条2項の要件を満たしておらず無効であるとして、原告に労働契約上の地位を認め、再雇用拒否当時の賃金の支払を命じました。

 

(4)結局、判決は、原告と被告との間に再雇用拒否当時の賃金相当額を賃金とする再雇用契約が成立していることを認めたことになります。しかし、本件就業規則の選定基準が原告に適用されないということから当然に再雇用契約の成立することにはならないはずであり、どうして直ちに原告と被告との労働契約の成立を認めることができるのかについては明らかではありません。高年法9条1項の規定に私法的効力を認めて、同条を根拠に労働契約の成立を認めたと考えるほかないようです。

 

7 選定基準の内容が争われたケース

(1)選定基準として定められた基準自体の当否が争われた事件の1つに、日通岐阜運輸(地位確認・賃金支払請求)事件(岐阜地裁平成20年9月8日判決)(請求棄却)があります。

 

[1] 日通岐阜運輸では、過半数労働組合との間の適法な手続にもとづ馳労使協定を締結して次のような再雇用の基準を定めていました。

i 「品質関係基準」

a 「過去1年間で所属セクション内での順応、セクション内のチームワークの維持に問題がないこと」

b 「過去1年間で会社資産である車両、備品の取り扱いに問題がないこと」

ii 「人事評価基準」

過去2年間の賞与の査定について1回でもCランクと査定されたことがないこと

 

[2] 原告は少数組合(建交労)の役員でしたが、被告は、原告が車両説輸事故及び車両接触事故を起こしたり、顧客からの苦情があったために「品質関係基準」を充たさないこと、また、これらを理由に過去2年間に2回C査定を受けたことにより「人事評価基準」も充たさないこと、を理由に再雇用を拒否しました。

 

[3] そこで原告は、「品質関係基準」は内容が抽象的であること、「人事評価基準」については賞与の査定の具体的な内容が労働者に明らかにされておらず、客観性も予測可能性も全くないことなどを理由に選定基準の効力を争いましたが、裁判所は選定基準の適法性を認めて請求を棄却しました。

 

(2)同様に、兵庫民法協の会員である郵政産業労組の組合員が郵便事業株式会社の継続雇用の基準を定めた労使協定の内容について、その効力を争い、現在、神戸地方裁判所で審理が係属中です。この事件では、とくに継続雇用希望者に対する「面接試験の評価が著しく低いこと」を継続雇用拒否の理由とすることの当否が争われています。

(事案の詳細については民法協ニュース第503号を参照して下さい)。

 

8 選定基準の不公正な適用が争われたケース

つぎに、選定基準を定める手続や基準そのものには問題はないが、選定基準が差別的に適用されたことを理由に継続雇用の拒否の効力が争われる場合があります。

 

(1)日本ニューホランド(地位確認・賃金支払・損害賠償請求)事件(札幌地裁平成22年3月30日判決)(一部認容)

[1] 被告は、従業員数577名の農業用機械器具の販売及び輸出入業務等を目的とする会社です。被告には、多数組合と原告を中央執行委員長とする少数組合(以下「甲野組合」といいます)とがありました。

被告は多数組合と協議をした上で、就業規則で定年退職者の再雇用制度を設け、再雇用の基準を定めました(以下「本件規程」といいます)。

なお、本件では再雇用基準は労使協定ではなく就業規則で定められていますが、手続の不備については争いになっていません。

 

[2] 被告が原告に対する本件再雇用拒否を行った理由は、

i 本件再雇用制度は、多数派組合と合意の上、所定の手続を経て、実施しているが、甲野組合及び原告は本件再雇用制度に反対していること、

 

ii 本件再雇用制度は、平成17年に実施された就業規則の変更によって設けられたものであるが、甲野組合及び原告は、平成17の就業規則変更が不利益変更であり無効であるとして同規則の有効性を争って提訴し、札幌地裁及び札幌高裁が平成17年規則は甲野組合及び原告には適用されない旨判示しているから、本件再雇用制度は原告に適用されないこと、

 

iii 仮に本件再雇用制度が原告に適用されるとしても、原告は、本件規程の再雇用可否の判断基準(「直近3年間のインセンティブ評価が5以上であること」)のいずれにも該当しない。
という3点でした。

 

[3] i について、判決は、「札幌地裁及び札幌高裁は改正就業規則のうち給与及び賞与の減額につながる部分(不利益変更に該当する部分)の効力について判示しているにすぎず、本件再雇用制度が原告に適用されない旨を判示しているわけではない。原告ほか甲野組合の従業員も、あくまでも給与及び賞与の減額につながる就業規則の改定が不利益変更に該当すると主張しているにすぎず、本件再雇用制度の新設自体に反対しているわけではない。そして、本件再雇用制度は、被告の全従業員にとって有利な制度であることが明らかであるから、当然に被告の全従業具に対して適用されると解するのが相当である。」と判示しました。

 

[4] ただし、判決は原告の地位確認については次のとおり述べて、認めませんでした。

 

「本件再雇用制度における再雇用契約とは、被告を定年退職した従業員が被告と新たに締結する雇用契約である。そして、雇用契約において賃金の額は契約の本質的要素であるから、再雇用契約においても当然に賃金の額が定まっていなければならず、賃金の額が定まっていない再雇用契約の成立は法律上考えられない。ところで、本件再雇用制度の内容を定めた本件規程によれば、再雇用契約における賃金は、再雇用時の従業員の能力・担当する職務、勤務形態等を基に個々に決定されることになっている。したがって、定年退職時の雇用契約における賃金がそのまま再雇用契約における賃金となるのではなく、再雇用を希望する従業員と被告の合意により再雇用契約における賃金の額が定まることになる。そして、本件において被告は、原告と再雇用契約を締結することを拒否しており、再雇用契約における賃金の額について何らの意思表示もしていない。そうすると、仮に本件再雇用拒否が無効であるとして仁原告と被告の間で締結される再雇用契約における賃金の額が不明である以上、原告と被告の間に再雇用契約が成立したと認めることはできない」

 

[5] しかし、他方で、判決は本件再雇用制度が新設されてから本件再雇用拒否がなされるまで被告に再雇用を拒否された従業員はいないことや原告が甲野組合の執行委員長として、被告と対立路線を歩み、その間、いくつかの労使紛争の解決を裁判所や北海道労働委員会に申し立ててきた考であるという認定を前提に、原告に対する再雇用の拒否の理由として、第一次的には、甲野組合及び原告が本件再雇用制度に反対していること、甲野組合及び原告が本件再雇用制度の根拠となっている就業規則の有効性を争ったこと等、原告ほか甲野組合の従業員の合理的意思並びに高年法9条及び本件再雇用制度の趣旨に明らかに反する失当な理由を挙げていることからすると、本件再雇用拒否は、それまで被告と対立路線を歩んできた原告に対して不利益を与えることを目的としてなされたものと強く推認されると判示しました。

 

[6] また、かりに本件規程が原告に適用されるとしても、原告に対するインセンティブ評価が低くて再雇用の基準を充たさないという被告の主張に対しては、「インセンティブ評価は、従業員の勤務成績及び勤務態度だけでなく、被告の営業利益の額も考慮して決定されることになっているから、会社の営業利益が少ないときは、いくら従業員の勤務成績及び勤務態度が良好であっても、インセンティブ評価が低くならざるを得ないこと、また、従業員の勤務成績及び勤務態度によって決定される部分についても どのような項目をどのようなウエイトで評価するのか、従業員の達成度合をどのように評価するのかについて何ら基準が設けられておらず、もっぱら評価権者の主観によって決定されているため、評価権者によっては相当厳しい評価がなされる可能性がある。このような問題点からすると、インセンティブ評価を再雇用の判断基準で用いることについては、高年法9条の趣旨に照らし、なお問題があるというべきである」として、インセンティブ評価自体に疑問を呈し、その上で、原告は、本件規程の他の要件(「自宅もしくは自己が用意する住居より通勤可他者であること」)に該当すると認められるから、本件規程の再雇用可否の判断基準を充たしていたと認められると認定しました。

 

[7] 結局、本件再雇用拒否は、原告に対して不利益を与えることを目的としてなされたものと認められ、本件再雇用拒否が権利の濫用に該当し、かつ、原告に対する不法行為に該当することは明らかであるとして、不法行為に基づく損害賠償請求を認容しました。

 

[8] 原告の損害額については、「原告は、本件再雇用拒否によって被告との間で再雇用契約を締結する機会を奪われたと認められるから、原告にはその機会を奪われたことによる財産的及び精神的損害が発生したというべきである。本件再雇用拒否の違法性の程度(本件再雇用拒否は、原告ほか甲野組合の従業員の合理的意思並びに高年法9条及び本件再雇用制度の趣旨に明らかに反しており、違法性の程度は高いというべき)、原告と被告との間で再雇用契約が締結された可能性の程度(賃金額で合意できる可能性は低かった)、原告と被告との間で再雇用契約が締結された場合に原告が取得することができたと推認される経済的利益の額(だだし、正確に認定することができない)及びその額を取得することができなくなったことによる原告の精神的苦痛の程度等、本件に顕れた一切の事情を総合考慮し」、原告の相当な損害額を550万円と認定しました。

 

(2)財団法人東京大学出版会(地位確認請求のみ、賃金支払は請求せず)事件(東京地裁平成22年8月26日判決)(請求認容)

 [1] 被告は労働組合と再雇用就業規則の制定に向けて協議することとし、再雇用就業規則案を示し、再雇用就業規則の運用に当たっては、再雇用を希望する定年退職者を排除的に運用しないという説明をしました。これに対して、労働組合は再雇用就業規則の文言が法の趣旨を損なうものではないことや被告の説明を好意的にとらえ、再雇用就業規則の実際の運用例について被告が組合の求めに応じて、希望状況、就労条件などの情報を提供すること、及び、再雇用就業規則の運用にあたって問題が生じた場合には組合と被告とが協議する旨の協定を締結しました。しかし、労使協定によって継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準は定められませんでした。

 

[2] 被告の再雇用就業規則では、再雇用の基準について、

i 健康状態が良好な者
ii 所定の勤務口、勤務時間に勤務が可能な者
iii 再雇用者として通常勤務ができる意欲と能力がある者
 という定めを置いていました。

[3] なお、再雇用就業規則の実施後に再雇用の対象となった定年退職者の内、原告以外に再雇用を拒否された者はいませんでした。

 

[4]被告は、原告の再雇用申し出に対して、就業規則に定める誠実義務及び職場規律に問題があったため、「再雇用者として通常勤務ができる能力がない」として、再雇用申請を拒否しました。

 

[5] 判決は、「継続雇用制度の導入に当たっては、各企業の実情に応じて労使双方の工夫による柔軟な対応が取れるように、労使協定によって、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定め、当該基準に基づく制度を導入したときは、継続雇用制度の措置を講じたものとみなす(法9条2項)とされており、翻って、かかる労使協定がない場合には、原則として、希望者全員を対象とする制度の導入が求められているものと解される」とし、「高年法の趣旨、再雇用就業規則制定の経過及びその運用状況に鑑み、再雇用就業規則所定の要件を満たす定年退職者は、再雇用就業規則の取扱及び条件に応じた再雇用契約を締結することができる雇用契約上の権利を有するものと解するのが相当であり、再雇用就業規則の要件を満たす定年退職者が再雇用を希望したにもかかわらず再雇用拒否の意思表示をすることは解雇権濫用法理の類推適用によって無効になる」という考え方を示しましたが、本件では前記の京濱交通事件のように再雇用基準についての労使協定がないことを問題にして直ちに再雇用就業規則の効力について述べるのではなく、原告について、再雇用就業規則の「再雇用者として通常勤務ができる能力がない」という被告の主張の当否を検討しています。

 

[6] 被告は、再雇用基準とされている「能力」に協調性や規律性等の情意(勤務態度)が含まれているとして、原告が被告の方針に従わずに懲戒処分を受けたことや原告の協調性の欠如を再雇用拒否の理由にしましたが、判決は、再雇用就業規則の制定経過、目的、再雇用就業規則の各要件の配置及び文言からすると、定年退職者が再雇用されるための条件としての「能力」とは、その中心的なものとして、当該職務を遂行する上で備えるべき身体的・技術的能力をさすものと解するのが相当であるが、当該職務そのものの内容や性質のほか、職務遂行に必要な環境及び人間関係に照らして、当該職務を遂行する上で備えるべき身体的・技術的能力を計るに当たって、協調性や規律性等の情意(勤務態度)についてもその要素として考慮しなければならない場合もあるものといえると判示して被告の主張を容れた上で、原告の編集者としての職務上の知識や経験は申し分なく、当該職務を遂行する上での技術的能力を備えていることは否定できないし、健康状態にも問題がないことを認定し、被告の主張する点は編集者としての職務を遂行する上で支障を来すほどの深刻な服務規律違反とは認められず、原告にはその職務を遂行する上で備えるべき身体的・技術的能力を減殺する程度の協調性又は規律性の欠如が認められるということはできず、再雇用就業規則所定の「能力」がないと認定しました。

 

[7] そして、本件再雇用拒否は原告が再雇用就業規則所定の要件を満たすにもかかわらず、何ら客観的・合理的理由もなくなされたものであって、解雇権濫用法理の趣旨に照らして無効であると判示して原告の地位確認を認めました。

 

(つづく)

(民法協・兵庫県民主法律協会ニュース 2010・11・20)

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